道楽もの
ストンプ・ヘールがRP牧場に着いた時、顔は曇っていたが、目は燃えていた。
「保安官、降りて座らないか」と声を上げた。
がっちりした身体を起こし、まだら馬から降りながら小さな唸りを出した。手綱をつなぎ柱に巻いた。「畜生、ネス・ハヴェロックよ、おめえは実に遠いところに住みあがって。」
「まぶしいから内に入らないか」と言った。「欲しいなら何とかコーヒーぐらいはあるだろう。」ドアをあけてストンプをなかへと招いた。
妻のリタは両手をのばして部屋の中央でストンプを迎えた。「アダム・ヘール。お元気でしょうか。」彼女はストンプの手を取りあげる。「必死ぶりにおいでになりましたね。本当にお元気でしょうか。教えてください。」ストンプの本名を口にするのはリタだけ。
ストンプの四角い顔に小さな笑みが浮かんだ。「ハヴェロック婦人、はるばるとあなたの美味しいコーヒーを遠いセント・ジョーンズから来ましたよ。本当に。」
「それでは、テーブルのところにお座りになって。今すぐにコーヒーを持って参りますので。」リタはストンプの手をとり、テーブルのところへと導いて、ハイバック椅子に座らせるようにした。「モメンティート」とスペイン語で待つようにいって台所へと消えて行った。
ストンプは外気にさらされて堅くなっていた手でステッサン帽を廻しに廻した。黙っていたから、私はなにも言わなかった。時期になれば、わけを話すだろうと思ったからだ。
リタがコーヒーを持って来た。そして、状況をすぐに読める彼女は何かがストンプを困らせているのがわかって、私たちを二人きりにしてくれた。
「うまいコーヒーだ」とストンプは言う。
「それで俺ここにいるんだ。美味しいコーヒーとあの美人がいるからね」と言った。
「俺なら、この牧場からあまり離れないように気をつけるな。」
「牧場ならケニガンがみてくれるよ。一生かけても彼の牛にたいしての知識に追いつかないからね」とストンプに答えた。
「そうだろうな」とストンプは考え込む。
「ストンプ?」
保安官は俺をみる。
「セート・ジョーンズからずっとほこりのなかで乗って来た訳はリタのコーヒーを飲むためじゃないだろう。」
ストンプは低い声で喋り始めた。喉になにかが詰まっていたようで。「ナバホ・スプリングの側で強盗はファゴーの駅馬車を襲った」と言った。
私はストンプが訳を話すのを待った。
「ならず者めがデントンを打殺した。リソデンドロン川岸を降り始めた時にだ。見張りも打った。それでも止めなかった。アルバカーキからのセールスマンも、クラウン・キングのアリス嬢も、アパッチ砦のゲインズ少佐も。一列に並ばれて殺された。畜生。」頑丈な手で帽子を潰してしまったストンプ。「皆死んだ。すべての貴賓は盗まれていた。それに、金庫も亡くたっていた。」
「郵便?」
「それと二万ドル。カムストック材木工場の新設備費だ。」
ストンプは帽子を撫でるようにして皺を伸ばした。「ネス、お願いかあって来た。一緒にそいつを追ってくれないか。」
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